ゆるむ

ハルヒとか

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ハルヒSS『好き・嫌い・嫌い』



古泉とハルヒの話。長いです。
なんかお話になってないけど好きと嫌いで迷う古泉君が書きたかったので……。
執筆時のBGM『Fukuyama Fire』の曲


『好き・嫌い・嫌い』


葛藤がある。

「SOS団は年中無休なんだからね!」
密かに頬を赤らめ、赤くなっている目をこすりながら彼女は言った。
彼女の顔はまるで病気が治った想い人を見るような、そんな優しい顔だった。
それを見て幸せそうに優しく笑っている彼と、泣きながら笑っている未来人。
思えば、涼宮さんはこの約半年の中でとても成長し、とても魅力的な人物になった。
今もそうだ。こんな幸せそうな顔、誰が見たって惚れ惚れする。
でも、僕はそれが嫌だった。
僕が彼女に好意を持っているということが。
僕が彼女を特別な女性として見ていることが。
「古泉君、りんごちょうだい。こんな奴に食べさせるりんごなんてないんだから」
涼宮さんは僕が丸裸にしたりんごにかぶりつく。
彼はそれを懐かしそうに見ている。いつもなら不満そうな顔をするのに。
三日間眠っていただけでSOS団や涼宮さんが恋しくなるほど、彼はこの世界を気に入っていただろうか?
「あたし帰るわ。もう団長としての役目は果たしたし、じゃあね」
荷物をつめて涼宮さんはドアへ向かう。
「ハルヒ」
「何よ」
涼宮さんはドアの前で立ち止まり、彼の方を見る。
「ありがとう」
涼宮さんは病室から静かに出て行った。

その時の涼宮さんの顔は眉を吊り上げ、目を細くして口はへの字という
どう見ても怒っているようにしか見えなかったが、僕には笑うのを堪えているように見えた。
というか、実際そうなんだろう。
ほら。こういうところに僕は惹かれる。
惹かれて惹かれて惹かれ尽くして。挙句の果てに最後まで行きそうだ。
でも、最後まで行くのに葛藤がある。
僕は彼女に惚れたくない。いや、惚れているだろう。それはもうとてもとても。
でも自覚したくない。そう思いたくない。
だって、彼女は僕の中学時代の恨みの対象だったのだから。
「あの、キョン君、涼宮さんはとてもキョン君のこと心配してたんですよ」
「……そうですか」
「だから、優しくしてあげて」
「はい、分かってます」
朝比奈さんもしばらくして病室を出る。この病室に居るのは僕と彼だけになった。
「古泉」
「なんでしょう」
「聞きたいことがある」
「珍しいですね、何でしょう」
彼は数十秒目をいろんなとこに配らせて
「いや、何でもない」
と言いきった。何だったのだろう。
しばらく沈黙が続く気がしたので僕も早々に引き揚げることにした。
「それでは」
「ああ……また明日」
「はい。また明日」
扉を閉めて曲がり角を曲がるとそこには涼宮さんがいた。
「涼宮さん?」
「帰るわよ、古泉君」
涼宮さんは僕にカバンを持たせて早足で歩く。
待っててくれたのか、荷物持ちが欲しかったのか。
どちらにしろ僕には嬉しい事だった。
「よかったですね」
「そうね」
「これで僕も一安心です」
「あたしは最初から知ってたわよ、キョンは絶対に起きるって」
「そうですね」
だからだろうか。彼が無事目を覚ましたのは。
「5人全員いなきゃSOS団じゃないんだから」
「そうですね」
「別にキョンが心配だったから病室に寝泊まってたわけじゃないのに
あいつは何を勘違いしてるのかしら。あたしは団員が心配だっただけなのに」
照れ隠し。多分熱を冷ましたいのだろう。
「あたしは、古泉君が入院することがあったりしても傍にいるわよ」
そんなことないのが一番良いんだけどね、と彼女は言ってそこで一旦話が途切れた。
「その時は、僕が罰金でしょうか」
「そうね、もちろん。だから別にキョンが特別ってわけじゃ……」
さっき、少しだけ嬉しかったのに。また彼の話になってしまった。
傍に居る。それは嘘ではないだろうけど、病室に寝泊まりまではしないだろう。
彼女にとっては彼が特別だからそこまでできる。
「羨ましいですね」
「へ? 何?」
「あ……いえ、何も」
うっかり呟いてしまった。
羨ましい。彼を羨ましいと思ってしまう自分が憎い。
あれほど嫌いだった彼女なのに、どうしてだろう。彼女に想われている彼に嫉妬する。
「……でも、よかった。キョ、団員が全員揃って」
素直に『キョンが目を覚まして』と言えばいいのに。
こういうところが……。

ふと、転校した時のことを思い出した。
高校生になっても僕の憂鬱な気分は晴れず、さらに彼女と同じ学校に転校。
気分は最悪だったし、彼女のことをとても恨んでいた。
でも彼女の笑顔を見ると安心して、それは仕事柄のことだと思ってたけど。
困ったな。自覚してしまった。
好きだなんて思いたくない。僕は彼女が嫌いだ。
憎くて憎くて、それでも憎みきれなくて……。
あんな顔を見てしまったらもうそんなこと思えない。
本当に幸せそうなあんな顔を見たら、あの時の僕が嘘のように思う。
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しばらく短編続けます

小説はこっちメインになるかもなあ……。

消失世界を勝手に想像して書いた話です。
消失ハルヒと消失古泉が同じクラスか分からなかったので、別クラス設定。
長いです。
消失でのジョンとの会話は原作と違います。


『彼女の世界は憂鬱で』


「あなたが転校生の古泉一樹くんね?」
彼女は誰よりも早く僕に声をかけてきた。
綺麗な声、きらきらした瞳、腰まである長く綺麗な髪。
転校してきたばかりで、周りが灰色のように見えた僕の目に、綺麗な人が映っている。
「古泉君、あたしに付き合いなさい」
……あとから知った。『涼宮ハルヒは美人で横暴で――……変人だ』と。

「ちゃんと来たわね」
彼女は朝一番に僕の元に来てこう言った。
「あなたが転校生の古泉一樹くんね?
古泉君、あたしに付き合いなさい。放課後、文芸部の部室で待ってるわ」と。
文芸部は二年前に潰れたらしく、今ではただの空き教室だ。
なぜ転校生の僕をこんなところに?
「涼宮ハルヒ」
「え?」
「名前」
「あ、はい、涼宮さん」
涼宮さんは腰まである長い髪を窓から流れる風にたなびかせて、言った。
確実に、はっきりと。
「古泉くん、あなたをSOS団の団員一号に任命します」
力強い声だった。はっきりとした意思。彼女の美しさが声にも滲み出ている。
初めてこの場所の色を見た気がする。色、匂い、彼女。
先ほどまでの鬱蒼な気分が晴れ、すべてに色がついた。
とても不思議な気分だった。

SOS団。それは彼女の完全な趣味の部活。
不思議なもの(宇宙人や未来人や超能力者など)を探し、一緒に遊ぶための部活。
ちなみに僕は『謎の転校生』らしい。
そんなポジション、二ヶ月もすればなくなると思っていたら、その通りだった。
涼宮さんは二ヶ月後、僕にこう言い放った。
「物足りないわね」
「はい?」
「つまらない。普通すぎて、何もなくて」
それは多分、僕に言われたことじゃなかった。
でもその時はどうしても僕に言われたような気がして、心が痛んだ。
そして、彼女への不満がでてきた。
そもそも勝手に彼女が僕に興味を示してきたのではないか。
勝手なことを言ったと思えば、勝手に仲間にされて。

「……会いたいなあ、ジョン」

一目見るだけでいい。と最後に呟き、彼女は黙った。
ジョン? 誰だろう、それは。
彼女に聞こうと思ったが、話しかけないでほしいと背中が言っているような気がした。
僕は黙って彼女の後姿を見つめる。
とても寂しそうで、世界に退屈している背中だった。
さっきまで苛立っていたのに。
今はジョンという人物に妬いている。
どうして彼女にこんなに想われているんだろう。
ジョンとは、どんな人だったのだろう。
いや、そもそも人か? そして、日本人か?
どうしたら彼女にこれほど想ってもらえるんだろう。
もっと彼女に僕を見てほしい。もっと想ってほしい。
なんだか泣きそうだ。

「ジョン? ……何でもないの」
数日後、彼女に『ジョン』の事を聞いたらこう帰ってきた。
彼女がそう言うなら、なんでもないのだろう。
ジョンのことは気になる。彼女の頭の中にあるのは『面白い事』だけのはずなのに
その頭の中にいるジョン。
気にならないわけがない。
ジョンとは、何なんだろう。どんな面白い事なのだろう。
どうしてこんなにもジョンが気になるんだろう。
ああ、いいなあ。
彼女の心の中に住みついているジョンが羨ましくてしょうがない。
今日も彼女はどこか遠くを見つめている。
声をかけたくてもかけられない。
僕は面白いものじゃない。
彼女が溜息をつく。
僕は彼女にこんなことしかさせられない。
せめて、彼女が遠くを見て溜息をつかないように。
遠くにジョンを見つめないように。

「あなたが……ジョンなの?」
ふらっと彼女は僕に体を預けた。
意外にも『ジョン』は近くにいたらしく、なんと異世界からきたらしい。
「うそ……嘘でしょう?」
「本当だ、ハルヒ。俺がジョン・スミスだ」
どう見ても日本人だ。ジョン・スミスというのはペンネームだろうか?
この人が、彼女の心に住みついている『ジョン』
別に面白そうでも何でもない。なのに、なんでこの人は……。
喫茶店に移動し、僕たちは彼からいろいろな話を聞いた。
並行世界の僕は、超能力者らしい。しかも北高生。
そして彼女がいわゆる神という存在で、宇宙人、未来人もいたとのこと。
これは夢か? それとも彼と彼女の仕掛けたドッキリか?
「ふうん……よし、今から北高に行くわよ! その長門さんと朝比奈さんに会うためにね」
彼女は今まで見たこともない笑顔になった後、
勢いよく立ちあがって喫茶店のドアへと歩いて行った。
一緒に歩いていこうとするジョン・スミスに向かって、
「僕が払うのは自分と涼宮さんの分だけですよ」
そう言うとジョン・スミスは意地悪そうに代金を払ってくれたら面白い事を教える、と言った。
結局、三人分の喫茶代を払った。
面白い事、とは僕のあちらの世界での役割だった。
機関や神人、彼女の精神世界――閉鎖空間など。
「それは……羨ましいですね」
「そうか?」
「ええ、そちらの僕は涼宮さんのことを何でも知っていて、涼宮さんも僕を信頼している」
「まあ、そうだな」

「僕は、涼宮さんのことが好きなんですよ」

ん?
「……そうか」
彼は一瞬とても驚いた顔になったが、すぐに表情を戻した。
というより、なんだこれ。
僕は今何を言った。
「分からなくもない。お前がハルヒを好きでもな」
そう、そう言った。
僕は、涼宮さんが好きだ――と
ああ、そうだったんだ。そうなんだ。
彼に対しての嫉妬も、彼女に僕を見てほしいのも。
好きだからかあ。
「……とても魅力的な人ですよ、涼宮さんは」
ふっと笑って白い息を吐く。
僕の吐いた息はすぐにすうっと消えた。多分、僕はこんな感じ。
彼女にとって僕は白。彼は黒、いや、赤?
ああ。
僕も彼女を笑顔にしたい。
憂鬱な彼女の世界を壊せるような笑顔を、彼は彼女にさせることができる。
僕も、僕もできたらな。
そしたら幸せだろう。僕も彼女も。きっと。


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